多くの皆さんがご存じように、マレーシアでは2018年9月24日以降、シンガポール以外の外国運転免許のマレーシア国内免許への書き換え手続きを停止していました。当初、マレーシア邦人駐在員の間では、不良外国人等の不正免許取得の摘発が一段落すれば、書き換えは再開されるとの楽観的な見通しが大勢を占めていましたが、残念ながら現実はそれほど簡単ではなく、現在(2020年1月)においても2018年9月以前の状態に戻っていらず、その復帰スケジュールさえ定かではない状態が続いています。
2019年9月4日の運輸大臣アンソニー・ローク氏の発表
そんな中で、昨年9月4日のマレーシアの英字新聞「Strait Times」で運輸大臣の談話としてMM2Hの有資格者と外国の運転運転免許証を保有しているマレーシア人においてのみ、外国運転免許のマレーシア免許への書き換えを認めるとの報道がありました。以下に元記事へのリンクを貼っておきます。英語ですので簡単に解説しますと、上記の2グループに関してのみ、条件付けで書き換えを行い、書き換え後の2年間は初心者免許扱いになるというものです。
ちなみに、MM2Hというのは、Malaysia My 2nd Homeの略称で、マレーシア政府の政策として、ある一定の条件(申請者の年齢が50歳を超えるかどうかによって変わる。)を満たした外国人が10年間マレーシアに滞在することを許可する制度です。申請者の配偶者、未婚の21歳未満の子共、ならびに60歳を超える両親も滞在を許可されます。
2019年11月1日より主要JPJオフィスにて書き換え業務開始
実際に2019年11月1日より、JPJ(Road Transport Department)の本部と州レベルの事務所でのみ、免許の書き換えが開始されました。詳細は以下のリンクから参照してください。
今後の展望
上記の動きはもちろん歓迎すべきものではありますが、2018年9月以前の状況回帰には程遠く、今後のさらなる改善を望みたいところです。また、今回の動きは事態の収束というよりは、MM2H政策の後押し的な性格が見え隠れし、根本的な解決にはまだまだ時間がかかるのかもしれません。
書き換えの停止には、運転免許証の不正入手を止め、関連した人物の摘発という明確な理由があったのですが、その後、一年以上も書き換えを許可しないというのは、かなり特殊な状況といえると思います。
上記のように当局の意図がよく分からず、状況は混沌としています。
マレーシアの自動車運転免許証について少し解説
マレーシアの免許証で他のアセアンの国で車を運転できるか?
一部の英語および日本語のブログ記事にて、マレーシアの運転免許証を持っていれば、アセアン諸国で自動車を運転できると記述されています。それは以下のアセアンの公式サイトにある記事やこの記事を基にした個人の記事が根拠になっていると思うのですが、実際の現状について少し解説します。
まず始めに、上記の記事の内容ですが、英語の文章ですので、ごく簡単に解説しますと、「ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールおよびタイはアセアンのメンバーとして人員の円滑な移動を鑑み、それぞれの国の国内自動車運転免許を相互に認め合うことに同意する。」という内容が1985年7月9日にクアラルンプールでアセアンの正式な同意として発表されています。
これを見る限り、アセアン加盟国(少なくても上記の6カ国は)それぞれのそれぞれの運転免許を認め合っているように思えます。しかし現実には、みなさんご承知の通り、マレーシアにおいてはシンガポールの免許を除き、認めるどころか、その国の運転免許から思考の免許への書き換えを中止している状況です。
また、以前(15年以上前ですが)シンガポールに駐在していた時、家族帯同しておりマレーシア人の家内と一緒にシンガポールで暮らしていたのですが、当然のように家内はマレーシアの運転免許をシンガポールの書き換えを行っていました。当時は筆記試験が必須で、家内はかなり苦労していたのを覚えています。
また、ぼくはマレーシアを振り出しに、シンガポール、インドネシア、タイそして現在はフィリピンに駐在していますが、駐在員の間でも、また私が接してきた現地の方々もアセアン内の運転免許が相互に使えるというように考えている人は皆無でした。ただ、以下のような事象には実際に経験しました。
- 検問の警察官が他のアセアンの国の運転免許証の提示に対してお咎めましに運転を許す。
- バイクレンタル・レンタカーの業者が他のアセアンの国の運転免許証でレンタルしてくれる。
ただ、これらは、担当者の曖昧さ、めんどくささに起因している可能性が大きいと思います。現実的に大切なのは、運転中に事故や違反をして、特に事故を起こして、アセアン他国の運転免許証が容認されるかということだと思います。ぼくの私感では、かなり難しいと思います。つまり、この場合、無免許で事故を起こしたとなる可能性があるということです。十分注意して下さいね。
マレーシアの運転免許証のメリット
そんなマレーシアの運転免許証ですが、他の国の運転免許証にない利点もいくつかあります。いかに具体的に説明していきます。
運転免許証の更新に特別なステータスが必要ない。
運転免許証の外国免許証からの書き換えには、その国で修学・就労していたり、特別な滞在許可を取得している必要があります。つまり観光で外国に行っても免許の書き換えはできません。これはマレーシアでも同じです。(といいますか、今マレーシアでは、この書き換えが一部の例外を除いて中止されていますが。)
また、通常は免許の更新にも上記のステータスが必要になりますが、マレーシアでは更新時には必要ありません。つまり、一度免許証を取得してしまえば、そのあとの更新には外国人であっても特に条件はないわけです。
ぼくもこの制度の恩恵を受けており、マレーシアでの駐在は10年ほど前に終了していますが、その後問題なく2度更新を行って、現在でもマレーシアの運転免許証を保持しています。
運転免許証の更新手続きが驚くほど簡単
マレーシアでは運転免許証の更新手続きが非常に簡単です。日本ではかなり煩雑な手続き(講習等)を運転免許試験場で行わなければいけませんが、マレーシアでは驚くほど簡単です。なんと町の郵便局にマレーシアの運転免許証、パスポート、顔写真、更新料(5年更新で60リンギット:2010年1月現在で約1,600円)を持っていくと混んでいなければ、あっという間更に新できちゃいます。
運転免許証の有効期限以内であれば、本人でなく代理人でも更新できる。
これも日本の実情と比較するとにわかに信じられないですが、実際にぼくは家内に更新してもらいました。特に委任状などは必要なく、代理人が家族である必要もなかったとのことでした。もちろん、代理人に依頼する場合でも必要書類は提出しなくてはいけません。免許証やパスポートは代理人に送付する必要はありますので、信頼できる人を代理人に選ばなくてはいけませんが、元駐在員で、出先の組織がマレーシアにあれば、総務の担当者に頼むことは十分可能だと思います。
運転免許の有効期限が切れていても3年以内(少なくとも2年以内)であれば更新できる。
有効期限が切れてからの更新は、さすがに本人がJPJ(マレーシアの道路交通局)へ出頭しなければいけませんが、そうすれば可能です。ぼく自身が実際2019年10月に、有効期限が切れてから1年11ヶ月ほど経ったマレーシア運転免許証の更新を行いました。
ここで言っている3年以内はその時JPJの係員の方から教わりました。この3年以内の裏どりは行っていないのですが、少なくともぼくの実績から2年以内であれば、可能だと言えます。この時の更新の際の記録をぼくの記事にまとめていますので、以下のリンクから、興味のある方は参考にしてみてください。
マレーシアの運転免許証のデメリット
それでは次にマレーシアの運転免許証のデメリットについて解説していきます。
マレーシアの運転免許証では正式な日本語の翻訳文があっても日本で運転できない
マレーシアの運転免許証では 日本語の翻訳文を添付しても日本で自動車を運転することはできません。これは、エストニア、スイス、ドイツ、フランス、ベルギー、モナコ、台湾の運転免許証であれば、日本に上陸してから1年以内であれば、正式な日本語の翻訳文があれば運転できることに対するデメリットです。
上記の7地域が特に優遇されているわけで、実際的には、マレーシアの免許のデメリットではありません。
外国の免許から書き換えたマレーシアの運転免許では国際免許を発行してもらえない。
この処置は、2108年の一連の対応の末、決定されたことなのですが、ぼくの免許のように、騒動以前に日本などの外国の免許から書き換えることによって取得したマレーシアの運転免許証ではマレーシアで国際免許を発行してもらえません。こうなった理由は定かでありませんが、これは明らかにデメリットですね。
まとめ
外国免許からのマレーシア免許への書き換え業務の再開は、わずかながら進展が見られてきましたが、まだ見通しが立たない状況です。新たな情報がありましたら、引き続き情報を発信していきます。
また、マレーシアは長年、日本人の移住目的国のランキング1位であるだけあって、かなりの量の日本語の情報がインターネットに流布しています。また、英語での情報も結構豊富です。
その中には、本来に認められていない国際免許を販売していると偽っているサイトや、マレーシアの政府官庁であるJPJを偽った偽りのサイトなど(英文のサイトであるが、正式のJPJのサイトでない旨はマレーシア語で記述されている。)が見受けられます。
また、意図的に間違った情報を流していなくても、情報が古かったり、勘違いなどにより実情からかけ離れた情報が記載されているブログ記事も見受けられます。記事内容に基づいて行動される場合は、十分に注意を放ってください。(最も、ぼくの記事も内容には注意を払って記述していますが、基本的には自己責任での利用をお願いしてはいますが。。。)
それでは、今回はこれまでにしたいと思います。最後までお付き合いいただき有難うございました。さようなら。
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