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人工知能は人間を超えるか(ディープラーニングの先にあるのも)を5回ほど読んでの感想だよ。

AI_Matsuo_00RRRR Book review
AI_Matsuo_00RRRR
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人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるものは、日本の人工知能研究の第一人者の松尾豊先生(東京大学大学院教授)が2015年3月に出版された人工知能の概念を専門外の人たちにも理解できるように説明した名著です。
ぼくはこの本を2016年の中頃に買って、それから5回ほど時間をあけて読みました。自分自身の大学時代の思い出と重なって(ぼくの専攻は情報工学ではありませんが、第2次AIブームが終焉を迎える頃に、LISPを使って、なぜがエキスパートシステムもどきをネタに修論を書いていました。)感慨深い思いがありました。今回はそんなぼくがこの本を読んでの感想をお話ししたいと思います。

AI(人工知能)とは一体何なのか?

AI_Matsuo_15
AI_Matsuo_15

最近は新聞の紙面に「AI」、人口知能の文字が載らない日は無いぐらい一般的な言葉となっています。評論家にもてはやされ、経営者に賞賛されており、その未来は光り輝いているように思えます。しかし、何人の人が「AI」の定義を明確に述べることができるでしょうか。多くの皆さんは、「AI」という言葉はよく聞くし、話題にもなる。しかしそれは何なのだよう?と思われたことはないでしょうか。
筆者はまず、自分自身を含めた日本の人工知能の専門家がどのような定義を人工知能に対して抱いているか説明します。そして巷で言うところの「人工知能」の歴史的背景を述べながら、レベル1から4までの定義を明確に説明し、「強いAI」と「弱いAI」という考え方を示します。これらによって、読者はおぼろげながらAI(人口知能)の定義をつかめるのではないでしょうか。
しかし最終的に、筆者が考える「AI」は技術的問題により、いまだかつて存在したことがないと述べています。

この本を織り成す2本の糸

AI_Matsuo_11
AI_Matsuo_11

この本は2つの要素を内包しているように思います。
1つ目は「AI」の専門家以外への入門書・説明書という一面です。これは本来のこの本の目的であり、ほとんどの読者がその目的でこの本を手に取ると思います。
2つ目は第2のAIの冬を経験した筆者が「第3のAIの冬を何とか回避しようとする」思いによる一面です。それは、筆者が研究分野としての人口知能の今後を思いやり、また、過去において一時期は半導体、ロボット、電化製品といった分野で世界のトップを行っていた日本の将来を心配して、そして自他共認めるこの分野の日本の第一人者の自分自身に対するプレッシャーに関しての、心のつぶやきなのかもしれません。それは本書の筆者によるあとがきにも表れていると思います。失礼な言い方かもしれませんが、「人間、松尾豊の人なりが現れているのかな、と勝手に思っています。」

1本目の糸:人工知能の入門書として

AI_Matsuo_14
AI_Matsuo_14

歴史的背景に始めり、「AI」の意味を簡単は言葉を使って、初心者にもわかりやすく記述されています。
本書は初版2015年とすでに4年前の本で、進歩のとても早いこの分野の本としては、かなり古い部類に入ると思うのですが、AIの入門書として何ら遜色のない内容となっていると思います。小さな改定を受けながら、今後もその地位を占めると思います。
この分野の本を多く読まれた方には同意いただけると思うのですが、英語の原書を日本語訳した本の中には、かなりひどい訳ものがあります、よく意味のわからないものがありました。当初は自分の能力不足で理解できないと思っていたのですが、英語の原書を見ると「この訳では理解できないよな」というのがかなりあったように記憶しています。それは誤訳ではなく、手間と時間をかけるのが惜しくて、無理な直訳をして起こっているものでした。推測するに、この手の内容を理解できる翻訳者が不足しており、その代わりにこの分野の専門家が忙しい業務の間に、無理して翻訳した結果どの思うのですが、正直如何なものかと思いました。
話が少しそれてしまいましたが、そんな状況の中、繰り返しになりますが、本書はAIの入門書としては、一つ抜きん出ていると思います。この分野に興味のある方にお勧めします。ぜひ読んでみてください。
この本をちゃんと一通り読み終えれば、評論家や経営者がAIや人工知能について、意見している際に、その人がAIや人工知能の本質をちゃんと理解した上で意見を述べているのか、それとも世間の流行に流されて、ただ言っているのか、何となくわかるようになると思います。

2本目の糸:AI冬の時代を経験した研究者の著書として

AI_Matsuo_13
AI_Matsuo_13

この本は入門書・説明書なので、多くの部分はこれまでの研究や世間の反応などを歴史を踏まえて、客観的な立場から、一般的な読者が理解しやすいように、順序立って、簡単な言葉を使って、丁寧に説明しています。この目的に関して本書が優れた本であるのは前述の通りです。
それでは、本書のもう一つの面とは、いったいなんでしょうか。それは著者の個人的な考えが現れているところだと思います。著者は本書の中で2つの大きな項目に対して自らの意見を述べています。それは以下の通りです。

人間の知能を原理を解明し、それを工学的に実現するという人工知能は、まだどこにも存在しない。したがって、「人工知能を使った製品」や「人口知能技術を使ったサービス」というのは実は嘘なのだ。

また、シンギュラリティの実現性、つまり「人工知能が自らの能力を超える人口知能を想像できるようになり、結果として人間を超える存在になること」についてもこう言っています。

人工知能が人類を征服したり、人工知能をつくり出したりという可能性は、現時点ではない。夢物語である。いまディープラーニングで起こりつつあることは、「世界の特徴量を見つけ特徴表現を学習する」ことであり、これ自体は予測能力を上げる上できわめて重要である。ところが、このことと、人工知能が自らの意思を持ったり、人口知能を設計し直したりすることとは、天と地ほど距離が離れている

上記を要約すると、筆者は現在はもとより、現在の延長線上にある未来においても、人工知能が人間の能力(その一部ではなく、全体として総合的に)を超えることはない。と断言しています。この発言は人工知能の専門家、ましてや第一人者のものとしては、かなりのインパクトがあるものだと思います。
もちろん、これが著者の本心であることに疑いを挟むものではありませんが、あえてこう発言するところには、「あんまり騒ぎ立てたり、祭り上げたりせずに、ゆっくり研究させてよね。」という願いが秘められていると思うのは、ぼくだけなんでしょうか。

また、以下に今回紹介した本のリンクを貼って貼らしていただきます。ぼくの記事を読んで興味を持たれた方は、以下のリンクから本を購入していただけると嬉しいです。以下のリンクを通じて書籍を購買していただくと、わずかですがぼくに広告料が入ります。(書籍の価格は変わりません。)
それは今度のブログ記事の作成の励みになります。ご賛同いただければ、よろしくお願いいたします。

まとめ

AI_Matsuo_12
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いかがでしたでしょうか。本書は最後の最後まで、つまり「終わりに」にまで興味深く読める希な本です。
また、アイキャッチの画像にもありますが、本書の帯にはヘッドフォンをつけたアニメの女性の顔が描かれています。(ぼくの本は2016年の版です。最近(2019年)のものは青色をメインに使った別バージョンになっています。)年配男性の方には、違和感を覚えられるかもしれませんが、これはアニメ「イブの時間」のヒロインのものです。これはこれで、考えさせられる作品になっていますので、先入観を捨てて一度、観られることを合わせてお勧めします。
それでは、最後までお付き合いありがとうございました。さようなら。

それでは、さようなら。

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